‥‥初期から影を素材に作品を作ってきたファブリツィオ・コルネリですが、それ自体は実体を持たない「光」と「影」を巧みに利用して作られた作品は、私たちの存在自体について多くのことを連想させる深い充実感を持っています。‥‥
(2001.9.18 – 11.25 東京都写真美術館 夢見る影展)
さて「手探りのキッス」展と同時期に開かれている展示ですが、こちらもインパクトがあります。あなたも子供の頃に、肝試しをした時に、懐中電灯で自分の顔を下から照らしたことはありますか?ファブリツィオ・コルネリ(Fabrizio Corneli)は、まさにこれを利用した作品です。
壁に何気ないせり出しが、見事に女性の顔や、飛翔する男のイメージを映し出しています。しかし、光を利用するという、これを考え出すと言う発想自体がすごいもんです。恐るべしコルネリ。ジョルジュ・ルース展に似た驚きを覚えました。
「飛ぶ男」は実体がない分だけとても軽やかでいかにも飛んでいきそうな雰囲気のするインスタレーションです。光が無ければ存在せず、また影がなくても存在し得ないこの作品群は少しあやうげなイメージも感じさせるものでした。
この手法だけでなく、スプーンのすくう面に写すと、ちゃんとした像に見える「アナモルフォーズ」のものもありました。
作品の特性もあってか、展示点数はすこし少な目に思いましたが、それでも一つ一つの作品の完成度は高く、満足しました。おしまいに、どうでもいい話ですが、前述の手探りのキッス展と合わせて見ても500円。お得です。