信用ゲーム展

Written by kamochan December 1st, 2001

‥‥「信用ゲーム」は、「おカネ」を基本テーマとする企画展です。抽象的に言えば、金銭価値と金銭になりにくい価値の対比やジレンマに注目するものです。‥‥ (2001.11.2 – 12.24 NTT/ICC 信用 […]

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‥‥「信用ゲーム」は、「おカネ」を基本テーマとする企画展です。抽象的に言えば、金銭価値と金銭になりにくい価値の対比やジレンマに注目するものです。‥‥
(2001.11.2 – 12.24 NTT/ICC 信用ゲーム)

さて今回も初台のオペラシティ内のNTTインターコミュニケーションセンターの企画展を見てきました。今回は、お金に関するテーマで10人のアーティストの作品が見られる展示会となっていました。

実際に会場を入ると、なかなかどれから見始めるか迷うところなのですが、まずシンプルなテーブルゲームを提示したクワクボリョウタ氏の作品。2人対戦専用のゲームですが、シンプルなだけになかなか楽しめます。奥に進むと、「信用ゲームα」があります。今回展示のタイトル作品ですが、”α” はデイトレードをごく簡単に体験できます。リアルタイムで株の値段が変化していくところに空売りや買いを仕掛けて、現金を増やしてくネットワーク対戦型ゲームです。
「信用ゲームβ」は入ってすぐの広間にあります。愛くるしいキャラクタが画面に登場するこのゲームのコンセプトは、資産運用。シンプルなのに、うまく練られています。「働かずに給料を超える収入を得たらクリア」など3つの目標に向かって、株取引や不動産売買、ビジネス投資を繰り返して資産を増やします。もちろん開発コンセプトがもともと商用には耐える仕様ではありません。が、フリーソフトの枠組みで考えるなら、とても素晴らしい出来のゲームでした!webでの公開や、続編も企画されているようなので、期待しましょう。

その前には、西村佳哲氏のインスタレーションがあります。箱に1円を入れると1円分の電力を味わえるものです。蒸すの電球の前にあるのですが、これが想像以上のものすごい暑さ!また、同氏の作品で日本硬貨を、同じだけの素材と取り替えることが出来るEXCHANGEコーナーがあります。

機関誌「Intercommunication」を読んで(書いてあることは難しいのですが、いつもそれに酔ってます。)、もっとも気を引いたのは、etoyです。タックスヘイブンで有名な、ケイマン諸島に会社登記があり、640,000株を発行しています。その資本金を「文化価値」へと転換させるアーティスト集団です。会社として活動しているため、各人の個性は特に不要であろうとの考えの基に、スーツにサングラスという匿名性のあるコスチュームに隠されています。ここらへんが日本的ですね。
1996年、このインターネット黎明期に、サーチエンジンの検索結果にetoyが作ったダミーサイトを忍ばせておく “the digital hijack” を決行。当時のインターネット全体のトラフィックの5%をジャックしたそうですから恐れ入ります。これで、アルス・エレクトロニカ net部門金賞を受賞しました。

今回は展示というよりかは、日本における企業PR活動の意味合いが強そうでした。etoyの株式の3200万分の1と刻印されたパチンコ玉(etoy.FIZZLE)を数十発受け取って、パチンコを楽しむのですが、これによって参加者がetoy.VALUE-SYSTEMへ投資をして価値を転換したということになるそうです。etoyのサイトで株を買うことも出来ます。株価は毎日変動しています。

一番ジレンマを感じたのは、100万円を樹脂で固めてオブジェにした、あいだだいや氏の作品。ネットオークションでの経過も一緒に展示されていましたが、売却価格は33万円だったそうです。これだけで単純に考えると、お金でなくなった「お金」は、3分の1の価値はある。ということでしょうか。それともオブジェとしての価格が33万円?お金は取り出せないのですが、取り出せたとしたら一体いくらの値段が付くんでしょうか…。オブジェとしての価値と金額の価値の両方で、100万円以上のはずですが…。

また、アーティストへの愛を転換できる村山華子氏の作品は、秤の上にある箱へいくらでも良いのでお金を入れると、背面にかけてある好きな封筒をもらえるという仕組み。何が入っているかお楽しみですが、私の封筒はシリアルナンバー、02114/10000なので、1万人限定のようです。
秤は1kgを指していたとして、すべて1円なら千円。1万人が1円なら1万円ですが、100円ずつなら…?お金は活動資金に使われるそうです。

他にも、足下のペダルを一生懸命踏むと、目の前のスクリーンに、「地球が消費したはずのエネルギー」や「新幹線を動かした距離」など、比べるには物差しが狂いすぎているものなのに、なんだか納得する展示もあります。

個人的には、いつもレベルの高い展示で、非常に興味深い同館の展示ですが、展示テーマと訪れた人みんながおもしろく思うもの、理解できるものとしては、1・2を争う展示であるように思えました。値段分の価値は十分、好奇心の満足として転嫁されたイベントでした。

 

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ART-MEMO

2015.04.11 – 2015.06.28 東京都現代美術館にて開催された。

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