メタファーとしての医学/芸術と医学展

Written by kamochan March 9th, 2002

‥‥‥本展は、現代の医学や生命科学のテクノロジーの進展に触発されながら、「医学」をメタファー(隠喩)として社会的な表現を行うアーティストによって構成されています。脳科学、解剖学、遺伝子工学、臓器移植、終末期医療など、医学 […]

Continue reading →
Close

‥‥‥本展は、現代の医学や生命科学のテクノロジーの進展に触発されながら、「医学」をメタファー(隠喩)として社会的な表現を行うアーティストによって構成されています。脳科学、解剖学、遺伝子工学、臓器移植、終末期医療など、医学の多様な側面を芸術にとって横断する本展は、「隠喩としての医学」を通して、世界を「臨床」的に読む、あるいは、聴く試みといえましょう。‥‥
(2002.1.18 – 3.24 NTT/ICC メタファーとしての医学/芸術と医学展)

2002年、最初に見に行った展示はおなじみNTTのインターコミュニケーションセンターでした。やはり冬は寒くてなかなか外に出るのが億劫になってしまうのですが…。しかも、今回は2回目の来場で、1回目の時は祝日代休で休館日でした。受付の方は休館でもいました。ICCの受付だけという役割ではないのでしょうね。その際はパンフレットだけもらって帰ってきました。今回は、芸術と医学展と共に、Brainsongと、Endsvilleも同時に公開されていたのでその感想も後ほど。

今回も多数のアーティストが多く出品していたのですが、まず注目したのは、ジャスティン・クーパー(Justine Cooper)氏の、”ラプト(魂を奪われて)”です。この作品は、MRIでスキャンされた人間の画像のビデオインスタレーションです。たしかに魂の抜け殻でしかない人間の形をしている「映像」でしかないはずなんですが、タイトルの付け方がうまいというか…。確かに魂を奪われた人間ではないモノが見えました。この作品はモノクロームですが、The Visible Human Project では実際に好きなところをカラー画像で見ることが出来ます。

会場入って左手にあるのが、”食卓の規範” です。もとみやかをるさんによるインスタレーションです。3つの作品から構成されているのですが、テキストが流れる “あのーれの日記” はとても問題提起的なインスタレーションです。題材には、過食症に悩む女の子の日記が流れていくものですが、内容は結構衝撃的です。インターネットの爆発的普及によって、他人の日記を見ることができるようになった今では、「見てはいけないモノを見ている」的スリリングな感覚を味わうことは容易ですが、表現方法も相まって秀逸だと思いました。

また、井上リサさんの “Doctor’s Hand 2002-1” では、医療用器具が一通り入っているアクリルのケースの中に、ゴム手袋が入っていて、手を入れられるようになっていて、医者のまねごとができるようになっているのですが、これは観客の方が楽しいでしょう。会場内に離れて設置されているテレビは、ケースの下から見える手の動きをモニタしています。確かに「それっぽく」写っているのが不思議です。医者ではない、普通の人がただそれだけの行為を行っている。が、そのように見える、「メタファーとしての医学」が織り込まれている展示テーマに即した良いインスタレーションでした。

また、関連企画として、CAVEの反対側の部屋に展示されていたのは、”Endsville”。ローランド・ブレナー(Roland Brener)氏高島陽子さんのインスタレーションです。パンフレットやコンセプトなどを見ると、かなり期待できそうだったのですが、実際を見てみると安っぽく見えてしまって、少し期待外れだったので残念です。サンプリングされた都市の音(チャルメラなど)のサウンドスケープが展開されるのは、なかなか面白かったです。自身の声をマイクに拾わせると家の照明の状態が変わるそうなんですが、ちょっと良く分かりませんでした。都市としての再考を促すインスタレーションである…という意味からすると、段ボールで出来た建物の模型は、ある種の、都市に対する皮肉にも取れる気がしましたが、考えすぎでしょうか。

もう一つの関連企画として、テレサ・ウェーンベルグ(Teresa Wennberg)さんCAVEを使用した “Brain Song” は必見です。もともと私は個人的にこのCAVEのアプリケーションは大好きなのですが、このアプリも良くできています。Interactive Virtual Environment 作品という訳なんですが、記憶・想像・知覚的な脳の働きをこのビジュアルで理解し、感情や体験のイメージを体験するように感じるにはとても難解ですが、3Dメガネをかけて映像が流れる様を見ている事自体で、結構ハイになれたりします。これに限りませんが、CAVEアプリを楽しむときは空いているときがいいですね。

 

Leave a Reply

ART-MEMO

2015.04.11 – 2015.06.28 東京都現代美術館にて開催された。

Continue reading →

View all

UNCATEGORY

creating images, leaving the moment behind…

Continue reading →

View all