……本展覧会は、今まで我が国でほとんど紹介されることのなかった、第一次世界大戦前後、つまり世紀末からバウハウス誕生に至るドイツにおける近代デザインの動向を検証するべく企画されました。(中略)ドイツおよび日本で所蔵されている作品・資料約250点で構成される本展では、20世紀初頭における近代デザインの動向を、ドイツ工作連盟の活動を中心に、バウハウスを金字塔とする従来の近代デザイン史の文脈から回顧するのではなく、ヘルマン・ムテジウスの言説から再構築することを目的としています。……
(2003.1.18 – 3.9 東京国立近代美術館 工芸館・本館 ヘルマン・ムテジウスとドイツ工作連盟:ドイツ近代デザインの諸相)
なかなか寒くて外に出るのも気合いを入れなくてはなりません。新年になりまして初めて向かったのが、皇居の堀の反対側、北の丸公園に隣接する東京国立近代美術館で開催されているこの展覧会です。格好を付けて、TASCHEN社から出てるbauhausの本を買ったまではいいけれど、あまり見てなかったものですから、本展示を見ればより理解とホームページ作りのヒラメキが得られるに違いない…と思って行ってきました。
この展示は、第一会場と第二会場に分かれており、まずは駅からまあまあ歩いた所にある、佇まいも見事な工芸館(旧近衛師団司令部庁舎)です。ここではヘルマン・ムテジウス(Hermann Muthesius)のパスポートや、通行許可書、ドイツ工作連盟の設立までの成り立ちとその時代の作品群が展示してあります。チャールズ・レニー・マッキントッシュ(Charles Rennie Mackintosh)のかの有名なハイバックチェアも展示してあります。ムテジウスが設計した教会の間取り図は見事です。
ドイツ工作連盟は、自分達の活動理念を広める為に、出版と展覧会開催をベースに活動していました。芸術と産業の融合と近代化を図るというポリシーが、展示されている品物の幅広さに表れていました。クッション・壺・磁器・椅子・電気ポット・シーリング・ティーセット・家具・家・燭台・ポスター・壁紙などなど…。たかが100年前ですが、されど100年前。現在でも通用するデザインが数多くあり、工芸教育システムの発展、ひいてはバウハウスにも繋がっていったんだなと思うところでした。
タゴベルト・ピェッヒェの壁紙は個人的に「来る」ものがありました。かの有名なマイセンの磁器も良いデザインのものがありましたが、これは一体いくらするんだろう…なんてことも思いつつ、次は第2会場へ。
「規格論争」で、連盟の若い作家から批判を浴び、ムテジウスの活動はほとんど取り上げられなくなってしまいました。というパンフレットの説明通り、こちらの舞台は、1927年にシュトゥットガルトで開かれた「住居」展が大きく取り上げられています。こちらは、ル・コルビュジェ(Le Corbusier)や、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van Der Rohe)など、有名すぎる建築家達の作品も出品されていたようで、思わずへぇーと得した気分になりました。雑誌「フォルム」も置いてありました。
こちらに置いてある家具や調度品は、高級なものを除いては、まさに大衆向けという感じで、高度なデザインを保ちつつ、大量生産にも対応できそうなものばかりでした。実際、当時のカタログには値段表も付いていたそうです。奇をてらっていないと言うかシンプルというか。何かをひらめきたいデザイナーの方は是非見る価値のある展示かと思います。
ドイツ工作連盟は、1933年にヒトラーによって解体され、第二次世界大戦が終結した5年後の1950年に再建されました。こんな風に感想を書いていると、ますますこの時代の工芸にハマっていきそうな気がします。
#この展示は、宮崎や京都を回っていたみたいですね。「クッションから都市計画まで」というサブタイトルが付いているのですが、どうもしっくりこないような…?