パリ・シャトレ座 ”レ・パラダン”

Written by kamochan November 7th, 2006

2006.11.04 – 2006.11.08 Bunkamura オーチャードホール にて開催された。大変前衛的な舞台でした。

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……バロック音楽会の鬼才、ウィリアム・クリスティ。1979年にレザール・フロリサンを結成、1987年にリュリ作曲の知られざるオペラ『アティス』の復刻上映がパリで喝采を浴び、それ以降、前衛的な演出家を起用した「バロック・オペラの読み直し」を次々と成功させ世界的な名声を獲得した。フランスで今もっとも人気の高い指揮者のひとりであり、バロック音楽の愛好者はもとより、広くオペラ・ファンからも熱狂的な支持を受けている。……
(2006.11.04 – 2006.11.08 Bunkamura オーチャードホール)

季節の移り変わりは突然にやってくるここ数年、早くも晩秋の風が吹く東京。10月最終週に、Alva Noto+坂本龍一(ryuichi sakamoto) の“insen” ライブを聴きに行っていたのですが、とある友人より「オペラでも観ないか?ビジュアル的にもおすすめだよ。」との誘い。二つ返事で嫁さんの分のチケットまで用意して貰い、Bunkamura オーチャードホールへと繰り出しました。

様々な人のblogを読んだり、主催の梶本音楽事務所の公式サイトを見てみたりして、舞台演出は斬新で面白そうだけど、これとこの古めかしいストーリーがどういう風に繋がるのやら…とはっきり言ってピンと来なかったのですが、いやはやとにかく入場です。客層は教授のライブとまた全然変わって紳士淑女の集まりです。普段味わえない雰囲気に、いささか緊張して指揮者の登場を待ちます。しかし、この会場でオペラをもっとも知らない二人組ですこりゃ。

指揮者ウィリアム・クリスティ(William Christie) と、レザール・フロリサン(Les Arts Florissants) が拍手喝采を浴びて、第一幕がスタートです。日本語字幕もステージ横に備え付けられているので言葉の壁は問題なし…。と、始まってすぐいきなりブレイクダンスです。確かにこれは私が想像していたいわゆる「オペラ」とは違いました。もちろん曲は1700年代に作られたクラシック。ですが、不思議と見事にヒップホップやブレイクダンスと合っています。ダンスなんだから音楽と合って当然のような気もするのですが、ロボットダンスやブレイクダンスなど、最新のスタイルにもマッチしていました。

ストーリーを簡単に言えば、騎士を好きになった娘に、嫉妬深い後見人が結婚を迫るが、妖精や侍女の助けも借りて、二人は後見人を撃退。娘と騎士は幸せになる…という単純明快なものです。基本的には、そのあらすじに沿って舞台が進んでいきます。大がかりな舞台装置は無く、スクリーンにかなりくっきりした映像が流れていて、それが舞台装置の替わりを果たしています。

この映像は、裸の男女がスクリーンを捲って、鳥やウサギ、馬、ライオン、象などの動物が駆け回り、地下鉄が走り現れ、シーンが転換する…とかなりシュルレアリスムです。ちょうどダリ回顧展がやってたりするのですが、ダリが好きな人だったら、このオペラは問題なくオススメです。

「革新と伝統」を標榜するパリ・シャトレ座の間違いない実力を見たところで休憩時間へ。ここでちょうど第二幕まで終わっているようです。トイレに行く途中、あらこの人はどこかで見たことが…と思ったら、テリー伊藤と目が合いました。なんでも各界著名人が割と多く見に来ているとか。

そしてフィナーレを迎える第三幕。スタートから役者がトランポリンで登場。恋に弾む心を演出していると思ったら、完全な裸にハートマークで前を隠している役者さんが。日本の宴会芸のような演出でしたが、この辺も本国ではウケているような気もします。会場も結構ウケていた気がします。ここから結構、ヌードのパフォーマンスが多かったです。ジャンルは異なりますが、ダムタイプ(dumbtype)の舞台を思い起こさせる物を感じました。

ちょっと曲が長く、その分ダンスだけのシーンも長くなり、やや中だるみしているかなと思う時間もありましたが、最後は出演者が全員登場し、「嫉妬などは気にせず恋をしよう!自由バンザイ!」とばっちり締めて大団円。オペラというより、ミュージカルのような感覚で非常に楽しめた150分でした。

ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau) がこのオペラを書いたのは1760年だそうですが、見事に現代を反映して戻ってきたと言えると思います。オペラが総合芸術と言われるように、舞台演出/ダンスを切り取って、それだけでメディア・アートに十分であったと思えます。20-30年くらい前の何かをリメイクするのが最近若干目立つようになってきました。今回はたまたま「オペラ」の領域にあるものでしたが、メディア・アートシーンでも昔の作品のリメイクが見られるようになっていくのか、はたまた後ろを振り向かずに今のペースで広がりを見せるのか、ほんとに楽しみです。最後に本日のキャストをメモしておきます。

□指揮:ウィリアム・クリスティ(William Christie)
□管弦楽/合唱:レザール・フロリサン(Les Arts Florissants)
□アティス役:トピ・レティプ(Topi Lehtipuu)
□アルジ役:ステファニ・ドゥスラック(Stéphanie d’Oustrac)
□ネリーヌ役:アンナ・バヨディ(Hanna Bayodi)
□妖精マント役:フランソワ・ピオリーノ(Francois Piolino)
□オルカン役:ジョアオ・フェルナンデス(Joao Fernandes)
□アンセルム役:ルネ・シレール(René Schirrer)
□演出/舞台美術/ビデオ/振付:ジョゼ・モンダルヴォ(José Montalvo)
□振付/衣装:ドミニク・エルヴュ(Dominique Hervieu)

#パリのシャトレ座が、いつもこういうオペラばかりやっているとは思いませんが、こういう現代風のアレンジは大変良いと思います。舞台衣装もUNIQLOなどとコラボ出来そうな感じでしたし、若者向けに宣伝すれば人気が出ると思いますが、チケットの価格レンジが、S 35,000~E 9,000ではかなり厳しい物がありますね…。

 

  • Photo: kamochan

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