……写真、映像、インスタレーション、ドローイングと、8名の作家たちが用いる表現メディアは様々です。また、それぞれに扱っているテーマも異なっています。しかしながら、その作品からは、今日の社会や文化、政治的状況をふまえながら、自らの世界を真摯に追求しているアーティストのみが持つ、アクチュアリティを感じることが出来るのではないでしょうか。……
(2008.03.05 – 2008.05.06 国立新美術館 企画展示室2E)
桜の花も散った後は、つつじの花が目にまぶしい季節になりました。今年の一番寒い時期に無事に娘が産まれ、嫁さんが実家で娘を育てていた頃、とおちゃんになった私は一人、気ままに美術展を巡っておりました…。最近はいわゆる、巨匠の絵画の展示に多く行っていたので、現代美術展示を見るのは久しぶりです。いきおい、夜勤明けで来てしまったので、余計に新緑が目にまぶしい。
子育てではなく仕事でフラフラになりつつ、なんとか乃木坂駅から国立新美術館に到着しました。日曜日なのでかなりの人手です。1Fのモディリアーニ展も見てから行きましたが、アーティスト・ファイル展は比較的人が少なかったように思えます。といっても、かなりの若者達がこの現代展示を眺めておりました。
一番最初は、竹村京(Kei Takemura) のインスタレーションで個人的な想いを強く感じるものです。白井美穂(Mio Shirai) のビデオ・インスタレーションは混んでいたので、人と人の間からちょっと眺める程度でスルーしてしまいました。登場人物が個性的ないでたちなのでちょっと見ただけでも目を惹きます。続いて、風景写真に撮影者自身の後ろ姿を写した、エリナ・ブロテルス(Elina Brotherus) の作品群。結構期待していたのですが、実物を見ると思っていたほどでも無かったので、何となく眺める程度でした。
一見して日本画のように見える精密画を手がける、佐伯洋江(Hiroe Saeki) の作品群は素晴らしいです。かなり間近で見るとそこに新しい世界が描かれているのです。夜勤明けなので集中して見られないのが残念でした。祐成政徳(Masanori Sukenari) の巨大バルーンの空間もともかく圧倒的です。この人の作品は美術館のエスカレータから見えるところにもあります。どう見ても男性のアレを想像するしか出来なかったのですが、いい加減頭が腐ってきたのでしょう…すみません。続く、ポリクセニ・パパペトルー(Polixeni Papapetrou) の子供時代の遊びを写した絵画的写真群も良かったです。いかにも外国的な遊びが映し出されているのですが、写っている少女達は人形のようで、退廃的な雰囲気を感じました。
今回、一番良かったなと思ったのが、さわひらき(Hiraki Sawa) のビデオ・インスタレーション6作品です。それぞれ6つのモニタがあって、時計・海・部屋・風景などでテーマが分かれてそれぞれの世界が展開していきます。真っ暗な空間でとても静かに色々なものが映し出されていくのですが、何かが変わっていくようで何も変化していないような、不思議な気分になります。この映像とリンクしたミニマルな音楽も気に入りました。なんとなく、でもずっと見てしまうような気分になります。最後に、市川武史(Takefumi Ichikawa) のビニルで出来た透明な彫刻をくぐり抜けて、展示室の出口に至りました。
今回の展示は、私と同年代の人達が作っている作品が多くて、同世代が作る作品を見るというのがとても面白いです。世代は同じと言っても、もちろん個性が違いますから、自分の感性と似たような「何か」を見つけるには至らないのですが、それでも何となくその「何か」が感じられる作品を発見すると、嬉しくなってしまいます。これからもどんどんこういう展示を見に行くのだと思いつつ、夕暮れの乃木坂駅へ向かっていくのでした。
#早いもので娘ももう2ヶ月を過ぎました。赤ん坊ながらに毎日どんどん大きくなっていくので、成長を見るのも抱っこをするのも楽しくなってきました。初めは子育てがどうなるかと思って心配が先行しましたが、実際やってみるとまさに「案ずるより産むが易し」で、産んでからの方が違った意味で大変ですが、また違う事が楽しくなってくるもんですね。いやはや。