……明和電機は、1993年に土佐正道と信道の兄弟によって結成された総合芸術ユニットです。「社長」、「副社長」を名乗り、作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼び、テレビやマスメディアへの登場、商品としてのプロダクト制作を続けています。……
(2004.11.03 – 2004.12.26 NTTインターコミュニケーションセンター)
10月まで私用で忙しく、写真を撮る日と美術館に行く日が少なくなっていましたが、もう今年も残すところ1ヶ月余りとなったところで、ようやく美術館巡りを再開する事が出来ました。今回は知名度も国際レベルのアートユニット、明和電機(Maywa Denki)が、いつものICCに登場という事で早速行って参りました。
勤労感謝の日で祝日とも重なったせいか、会場はかなりの人で賑わっていました。こんなにICCに人が居るのを初めて見た…。しかし私はメンバーシップ。何回来ても無料なのです!…と、どうでもいい優越感に浸りつつロビーを見渡すと、明和電機の沿革とおなじみの制服が3バージョン飾ってありました。もともと明和電機は、東芝、松下電器の下請け工場として業務を行っていましたが、オイルショックによって倒産しその後、息子達がアートユニットとして、その名を復活させたものでした。
メイン会場に上がる前にも賑やかなパーカッションが聞こえてきます。会場は製品ラインナップである、「魚器(NAKI)」「TSUKUBA」「EDELWEISS」シリーズに分かれていて、どこからでも見る事が出来ます。ひとまず一番近い魚器シリーズから見る事にしました。
「魚器(NAKI)シリーズ」は、それぞれ製品にAからZまでのコードが振られており、”自分とは何か” をモチーフとして出来た物です。手を触れる事は出来ませんが実働する製品が多数展示されていました。この中でももっとも有名になったのは、魚コード(Na-cord)でしょう。しかしながら、私がもっともメディア・アート的と思ったのは、魚の通った軌跡とタイプライタが連動するタコニワとコイブミです。
次に見たのは「TSUKUBAシリーズ」で、お馴染みの機械仕掛けの打楽器群です。1995年にはTV番組「タモリの音楽は世界だ」に出演しており、指パッチンでパフォーマンスをしていたあの楽器も展示されています。これだけのセットが揃っていると迫力があります。いくつかの楽器は実際に演奏する事も出来ます。他にいくつかに分かれた小部屋もあり、その中でも自由に演奏が出来るようになっているのですが、クワクボリョウタ(Ryota Kuwakubo)とのコラボレーションもしていました。やけに上手い演奏の人が居るなあと思ったら、なんと土佐社長自らお出ましのパフォーマンス!その後は記念撮影から他のセットへの演奏と、大勢の人を引き連れながら移動していました。
見に来た当日は18時からトークショーがあったようで、ついでのサービスなのでしょう。ICCスケジュールによると、これからも様々なイベントが予定されているので、社長を一目見たい方にはその日の夕方に行くのがおすすめかもしれません。このコーナーでは、明和電機の制服をレンタルしてコスプレが出来るので、着ていたら何か面白い事があるかもしれません。
少し目立たないのですが、無響室左手のスペースでは明和電機のキャラクタ「ノックマンのできるまで」として、まるまるノックマンに浸れる部屋が用意されていました。子供達は大喜びです。そして「エーデルワイス」を見に行こうとすると、ちょうどTSUKUBAの自動演奏が始まっていました。機械仕掛けなので、音楽だけではなく見ているのも楽しいです。
私もさほど明和電機を知っていたわけではないのですが、会場内の説明ボードによると明和電機の事業戦略もしっかりしていました。そのコンセプトは「プロトタイプは売らず、それを家庭用に改修/量産したもので稼ぐ。」 現実的に見て、おそらく魚器シリーズが最もそのコンセプトに沿ったものになるのでしょう。というわけで魚器シリーズは全種類が発売予定だそうです!
そして最後に「EDELWEISSシリーズ」です。展示室に入ると、パンフレットに書かれているとおりの「神殿」をイメージした空間が広がっています。部屋中央には4つのスクリーンが置いてあり、そこに”EDELWEISSシリーズ” の中核を成す物語 “EDELWEISS PROGRAM”が順々に投影されています。
物語の世界観としてはファンタジックに崩壊させた近未来像と言ったところでしょうか、イメージスケッチも多数展示されています。その物語の現実感を強力に補強するのが、部屋の周囲に置いてある製品=神具となっています。大きな「末京銃」は実際に試験管を発射出来るようで、その映像も見る事が出来ます。私は「プードルズ」が気に入りました。その説明は「脆弱なオスが、メスに対抗するために作った金属性のアゴ。ナイフの牙をエンジンで駆動し、メスを噛み砕く。」とほほ、なんか泣かせますね。すごいリアリティがあるなあ…。こちらの自動演奏は残念ながら聴けずに会場を後にしました。
「ナンセンス=マシーンズ」とタイトルされている本展示ですが、明和電機の考えるナンセンスとは超常識だそうです。確かに”EDELWEISSシリーズ” は今までの明和電機のプロダクトとは、明らかに一線を画しており、よりアート色の強い物になっているように思えます。最初からこのシリーズで展開していたなら、明和電機の名はここまでにはならなかったのではないかと思います。
しかし、”EDELWEISSシリーズ” が「ナンセンス」ではないセンスで本格的に制作・発表された事で、前述した他の2つのシリーズの価値、明和電機のメディア・アート・ユニットとしての価値を大きく上げたのではないかなと思います。最終的に全ての物語が、ナンセンス=マシーンズとして具現化される予定らしいので、もちろんこれからも楽しみです。
#今回の展示のほとんどは、明和電機のオフィシャルサイトで見る事が出来ます。エーデルワイス・プログラムも見られますよ!