……この展覧会では、日本のアーティストたちが試みてきたテクノロジーを使った実験の数々を振り返り、さらに国内のアーティストたちの近作も同時に展示いたします。戦後の芸術が、映像や音楽などの様々な分野をまたがり、さらに産業や対抗文化など、複数の潮流をたどりながら現在から未来へと向かっていることを概観できる貴重な機会になるのではないでしょうか。……
(2005.10.21 – 2005.12.25 NTTインターコミュニケーションセンター)
ある日突然冬が訪れ、一気に冷え込んだ東京。今日もほぼ本拠地と化した、新宿オペラシティ・NTTインターコミュニケションセンターへ向かいます。平日の山手線以内の道路はすごく混んで時間がもったいないので、ひとまず池袋に車を置いて電車で向かいます。20分程度で到着したオペラシティは早くもクリスマスツリーが置かれてはや雰囲気は年末、ライトアップもされていました。今では珍しくなった回転ドアをすり抜けて入場です。
今回は特に下調べをしてきたわけではないのですが、田中敦子という名前に聞き覚えがあると思ったら、確か今年の前半に行った痕跡展だ…ということで、言わば日本のE.A.T.活動を展示しているという感じです。今回も整理券が必要な作品があるとのことで、とりあえず整理券をゲット。この作品は、前林明次の “ものと音、空間と身体のための4つの作品” で、平日でも30-60分待ちでした。その間に他の展示を見ることにしてみます。
まずはクワクボリョウタ “fluid” です。シンプルなリズムマシンを使って演奏するというものです。ワイヤレスヘッドホンから心地よいリズムが流れ、スクリーンには実際の演奏風景が映し出されています。リズムマシンのサンプルもありましたが、これでの演奏は出来なさそうでした。
そのまま無響室の方向へ歩いていくと、中沢潮の “不定形における夢幻” があります。1963年の作品を本人の監修のもと再作成したもので、鏡と鏡にはさまれた連続画像の中に羽根が浮かび上がります。オフィシャルサイトには過去の作品のリメイクの様子を見ることが出来ます。すぐ隣には、岩井俊雄 “時間層II” があります。ICCに昔常設されていた、グレゴリー・バーサミアン(Gregory Barsamian)の “Juggler” と同じ原理のものでこちらの方が古いので、古さを感じさせて当たり前なのですが、一つ一つの人形の動きが細かくて驚かされます。提示される仕組みはシンプルなのですが見ていて楽しいです。
ロビーには3面にスクリーンが映し出され、様々なキャラクタを動かしている、江渡浩一郎 “Modulobe” はまさに今風のアートです。画面上の生物を動かすことが出来るのですが、これはパソコンがあれば、モジュールを組み合わせて新たな仮想生物を作ることが出来るので、家で楽しんだ方がもっと良いかもしれません。ソフトの動作は快適でハマるかもしれません。
そのまま、ギャラリーAの方へ進んでいくと、田中敦子 “作品<ベル>” があります。ボタンを押し続けると、入ってきた階段に設置されていたベルが順番に鳴っていく仕組みです。会場は静かな空間であり、1度ベルの音が鳴るだけでもなんだか気まずいのですが、躊躇せずに押し続けてみましょう…。
ギャラリーAへ入ると、すぐに目を引くのが、佐藤慶次郎 “岐阜ススキ群 ’99” で、数十本設置された金属ポールにつけられたボールが静かに上下しています。これはまさにススキです。他にもいくつかの小さい展示がありますが、アートというよりもおもちゃを感じさせます。突き詰めていけば、難しいテクノロジーに支えられていると思いますが、大変わかりやすく見ているだけでも楽しいものでおすすめです。
他にも映像作品が多数あったのですが、今回は時間が無くてゆっくり見ることが出来ませんでした。そうこうしているうちに、整理券を貰った展示の予約時間が来たので、作品群をすり抜けてギャラリーBの一番奥へ。
前林明次の作品は、1人づつの体験で約10分でした。感想としては、ちょっと期待外れというか…私としては目新しさを感じず、残念ながら待ち時間分の価値が無いように思えました。係員の案内で、閉所&暗所恐怖症の方はお断りということでしたが、天井を見れば大丈夫です。2つめの部屋の[終わり]が分かりづらいのでこれから見られる方は、注意してください。
今年始めに見た展示会との関連があったのには驚きでした。その時代時代において、言われるいわゆる先端の「アート」は、その時代のハイテクノロジーと密接な関係があるということを再認識する展示です。2006年に差し掛かるちょうど今は、どちらかというとソフトウェアが目立っていて、ハードウェアはこれからだと思っています。そうなるとまた5年後くらいの、アート&テクノロジー展は進化したハードウェアとの融合が見られて大変面白そうな気がします。
#グーグルとアマゾンが合併したらどうなるのか…なんて話が出てきたのは、EPIC 2004が元ネタなんでしょうか。遅ればせながら最近見ました。リアリティのある話で大変興味深いです。そういえば、坂本龍一のnews letterでICCの存続決定という話を目にしましたが、やっぱり存続/廃止案ってあったんですね。ICCが無くなっちゃったらほんとさみしいなあ。