……これまで映像、音響、コンピュータ制御された舞台装置とパフォーマーの身体などで構成されるパフォーマンスや、インスタレーション、CD、印刷物といった複数の媒体を用いて、高度情報化社会やジェンダー、エイズなどをめぐる問題、生と死の境界、記憶といったテーマをアイロニーとユーモアをもって表現してきました。……
(2002.8.23 – 10.27 NTT/ICC ダムタイプ・ヴォヤージュ)
いよいよNTTメンバーシップに入ろうかと思ってきました、今回は世界に誇る日本のアーティスト・グループ、ダムタイプ(dumb type)の新作インスタレーション展と、これまでダムタイプの公演の記録ビデオの展示を見に行ってきました。
今回の展示は、「暗闇と光」に尽きるでしょう。インスタレーションが展示されているギャラリーでは、真っ暗闇の中の部屋の中に、インスタレーションが据え置かれています。一筋のレーザー光線によって、他者の存在が分かる=ぶつからないようになっています。公演と内容がリンクしているインスタレーションなので、細かいところが分かりませんでしたが、流れる風景と、地図(海図?)をトレースしていく様は、Voyageそのものでした。
また、今までダムタイプが公演してきた記録ビデオは、”036-Pleasure Life” “Pleasure Life” “pH” “S/N” “OR” “memorandum” の6つを上映しており、朝から行けば全て観る事が出来ます。
今回は、ちょうど “S/N” 全編を観る事が出来ました。このパフォーマンスは、ツアー中にダムタイプのディレクター、古橋悌二氏がHIV感染による敗血症で急逝し、その後も公演を続けて多くのコミュニティに影響を与えてきました。NTT/ICCには、”インスタレーション OR” という作品が展示されていて、それを観た事は何度もありますが、これが初めて観る、ダムタイプのパフォーマンスです。
エイズとは何か、ジェンダーとは何か、性同一性障害とは、そして「愛」とは。1994年に初演されたテーマは21世紀になる今でも未だ…少なくとも日本では…一般性を獲得していないテーマをダイアローグで語り、4面のスクリーンに映し出されるビデオ/テキストと、フラッシュとミニマルテクノの音楽、変態的とも思えるボディパフォーマンス。しかし、斬新的でせつなさの残る感じ。古橋悌二の死がそうさせるのでしょうか、それではあまりにも単純でしょうか。舞台を観たらどんなに衝撃的だったでしょう、ビデオでもそれを感じ取る事が出来るのですから。
本来の意味では、生のパフォーマンスを観るのと、記録ビデオの追体験では大きな違いがあると思うのですが、断片だけははっきりと伝わってきました。ラストシーン、アマポーラが流れる中で、古橋悌二の回答を観る事が出来ました。
無響室での展示も、ダムタイプの音楽・音響ディレクターの池田亮司氏によるサウンドインスタレーションです。”db” と名付けられた3分間の聴覚拡張体験です。前置きにあるように「気分が悪くなった方はボタンを迷わず押してください」なんて書いてあるように、部屋も真っ暗になり、音が反響しないので、椅子に座っているはずの自分が平行になっているのかすら怪しくなった状況で、結構な音響のインスタレーションが始まるので、はじめは結構ビビります。
3分間は意外と短く感じます。知覚の拡大を促すというように、通常では絶対に得られない不思議な感覚を体験できます。無響室から出たら、右手のギャラリーへ。お楽しみです!閉所・暗所恐怖症の方にはあまりおすすめできませんが、我慢してやる価値はあるかもしれません。
2002.12.16追記:展示が終了したので書きますね。右手のギャラリーは、目も眩むほどの真っ白な空間です。右も左も奥行きも分からないほど真っ白な空間で、視界が確実にホワイトアウトします。今までの真っ暗な無響室とのギャップが心地よい…。というか、意識の拡張が確かに味わえるものでした。