……過去の絵画を消化しつつ、今日的な美と意義を持ち合わせたそれらの絵画は、各々が独自性に富んでおり、決してひとつの絵画観に基づいているわけではありません。しかしいずれも、現代の感性や価値観に根ざし、前衛に対するこだわりからは解放されています。またそのほとんどが、新鮮な具象的絵画である点も特徴的です。本展は、90年頃から現在までに国際的舞台で脚光を浴び、欧米の最前線で活躍している画家たちをまとめて紹介するものです。日本初紹介の画家も多く、グローバル化時代の絵画を知る、絶好の機会です。……
(2006.10.03 – 2006.12.24 国立国際美術館)
大阪もあっという間に冬が近づいたような11月の下旬。今回初めて訪れた、国立国際美術館は大阪の中之島にありました。他の用事で大阪を訪れたのですが、今回の展示を見てみたかったのと、やはり行ったことの無い美術館に行ってみたいという興味が大きく、さっそく京阪電鉄・淀屋橋駅に降り立つのでした。
大阪の街は東京ほど大きくない分、まとまっていて良いなあという印象があります。東京と違って川も身近です。住んでみたらまた違うのかも知れませんけれども…。とそんなことを思いながら土佐堀川沿いに徒歩だいたい15分。意外と遠かった。やっと国立国際美術館の正面に到着しました。もっとどっしりした美術館を勝手に想像していたのですが、ヨットの帆を思わせる軽快な外観が思い切り目を惹きます。
土佐堀沿いを歩く最中に淀屋橋方面を振り返る。都会なのに遠くに山も見えるところが東京にはない風景で良いです。 |
肥後橋までたどり着く。あと400m弱との看板が…。 |
もともと万博記念公園にあった美術館を、2004年に新築して出来たばかりの美術館らしく、まだ全てが新しいです。地上部分は入口だけで、それ以外の展示室は全て地下にあるようです。チケットを購入して、早速地下へ。開放的な大空間をどんどん下がっていく感覚も面白いです。エッセンシャル・ペインティング展は最深部の地下3階で行われていました。
平日の昼間ということもあってか、ほぼ貸し切り状態。そしてさすが国立美術館と思わせる広大な空間に13人のアーティストの作品が展示されています。時間はたくさんあるので、順番にのんびり見ていくことにしました。足音が大きく感じられるほど静かに展示を見るのも久しぶりです。
否応なしに目を奪われる、女性の衝撃的なポルノグラフィ “Miss Pompadour”、”Fingers” を描いていたのは、マルレーネ・デュマス(Marlene Dumas) の作品群。後で調べてみたら「死とエロティシズム」に拘るアーティストとのこと。個人的に絵画でこのようなストレートな表現は余計に「リアル」を感じさせられます。
ジョン・カリン(John Currin) の絵画も不思議です。古いタッチの絵であるにも関わらず、アメリカン・コミックのような印象でもあり、女性の胸や表情がやたらに誇張されています。妙なバランスで描かれていて、なぜか感じてしまう素朴さが不思議でした。
マンマ・アンダーソン(Karin Mamma Andersson) の作品群も意味ありげなタイトルが付けられていて、こちらが勝手に「その後」を想像してしまうような物語性の強い作品です。北欧のアーティストは、音楽でもそうなのですが、どことなく寂しさを感じさせる要素が多くあって非常に好きです。
たぶん一番分かりやすいであろう、ミッシェル・マジュリュス(Michel Majerus) の作品群は、”スペース・インベーダー” や、”セーラームーン” などいわゆるジャパニーズ・サブカルチャーに影響を受けたものが展示されていました。作品のタイトルである “what looks good today may not look good tomorrow” とは、凄まじいスピードで生産と消費が繰り返される現代社会への皮肉を絵画によって強調したものと言えるでしょう。残念ながら、マジュリュスは2002年に飛行機事故でこの世を去っています。
最後は、鮮やかな色彩で抽象的なイメージの、ベルナール・フリズ(Bernard Frize) の作品で展示が終わります。確かに今まで見てきた作品で抽象画はほとんど無かったようでした。
今回の展示は、各部屋の入口にアーティストの名前だけが掲示されていて、タイトルやキャプションなどの掲示はありませんでした。私は絵画を見るときはどうしてもなんだかんだと説明が欲しいので、絵を見てパンフレットを見てという感じだったのが若干面倒でありました。今現在の絵画シーンにおける、見ておくべき、もしくは旬な海外アーティストの作品が一堂に会されていて、これだけのボリュームというのが大変見応えのあるものでした。また近い未来に繋がるものがあると思うと楽しみです。
#絵画を描くアーティストのオフィシャルサイトは、若い作家でもほとんど準備されていないのか、見つかりませんでした。発表の場がネットでも可能なメディア・アートのジャンルではないので、まあそんなものかなと思うのですが、絵画の場合は自分の作品をわざわざデジタルにして紹介するのもナンセンスという気もします。